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風立ちぬ (堀辰雄) 143分割入力文の数= 143 <<   1  2  3  4  5   >>

美しい高原で病気の婚約者に付きそう私。残された短い日々を、二人はどうすれば幸せに送ることができるのか? 深い愛情を描く堀辰雄の名作

作家や目的で選ぶ

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    402
    IA02985 (2022-09-30 評価=5.00)

    私は当初、節子の枕もとに殆ど付ききりで過ごしていた。季節が進むと、周囲の林は新緑に色づいた。私は時間というものから、抜け出してしまったような気がした
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    379
    IA02986 (2022-09-30 評価=5.00)

    時間から抜け出た単一な日々であっては、身近な彼女のしなやかな手や微笑が異なった魅力を引き出した。だが、彼女はときおり熱を出した。体を衰えさせるにちがいなかった

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    404
    IA02987 (2022-09-30 評価=5.00)

    ある夕暮れ、あたりの風景が鮮やかな茜色を帯びながら、鼠色に徐々に侵され出しているのを二人でうっとり眺めた。私は溢れるような幸福を感じた
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    421
    IA02988 (2022-09-30 評価=4.00)

    私が「いつか、今の生活を思い出すようなことがあったら、どんなに美しいだろう」と言うと、彼女は愉しそうに同意した

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    433
    IA02989 (2022-10-03 評価=5.00)

    彼女はためらいながら「そんなにいつまでも生きていられたらいいわね」と言い足した。会話の間に異様なまでの夕暮れの美しさは消えていた
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    434
    IA02990 (2022-10-03 評価=5.00)

    「私はあなたが、本当に自然を美しいと思えるのは、死んで行こうとする者だけだ、とおっしゃったのを思い出した」と彼女は言う。私は目を伏せた

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    397
    IA02991 (2022-10-03 評価=4.00)

    *** 真夏になり、サナトリウムの患者が増えだした。私達は二人だけの生活を続けていたが、節子は暑さのために食欲をなくし、夜もよく寝られないことが多かった
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    410
    IA02992 (2022-10-03 評価=5.00)

    私は病人の枕元で、息をつめながら、彼女の眠っているのを見守っていた。それは私にとっても一つの眠りに近いものだった

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    391
    IA02993 (2022-10-04 評価=4.00)

    自分もいつまでも寝つかれない時は、痛みを抑える手つきを真似たりした。ある日彼女が「病人のそばばかりいないで少しは散歩でもしたら」と言った
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    399
    IA02994 (2022-10-04 評価=5.00)

    私はよく他の患者のことを話題にしたが、一番重症と思われる、ぞっとする咳の音を立てる十七号室の患者の話だけは避けていた

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    414
    IA02995 (2022-10-04 評価=5.00)

    八月末近い夜、向こうの下の病棟が騒々しくなり、小走りの足音、器具の鋭くぶつかる音などが聞こえた。私はその嵐のような騒ぎが何であるか知っていた
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    421
    IA02996 (2022-10-04 評価=5.00)

    彼女が神経的な咳をした。私は目が覚めて隣室に入り、ベッドの縁に腰かけると、気弱そうな彼女は私は「そこにいて頂戴」と頼んだ

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    373
    IA02997 (2022-10-05 評価=5.00)

    九月になると雨が多くなった。毎日窓を締め切っていたが、ある日、中庭の向こうから一人の看護婦が近づいて来るのが見えた
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    408
    IA02998 (2022-10-05 評価=5.00)

    それは第十七号室の看護婦で「あの患者が死んだのかもしれない、こんどは?」と思うと心臓がしめつけられるような気がした

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    355
    IA02999 (2022-10-05 評価=4.00)

    その日はとうとう一日中、病人の顔をまともに見られなかった
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    390
    IA03000 (2022-10-05 評価=5.00)

    寒くなると、サナトリウムの中も患者達が少しずつ去り、冬をこちらで越さねばならない重い患者達ばかりが残った。第十七号室の患者の死が、寂しさを目立たせた

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    382
    IA03001 (2022-10-06 評価=5.00)

    九月末、裏の雑木林に人の出入りがあった。翌日栗の木を伐り倒していたので、気味のわるい神経衰弱の患者が林の中で首を吊っていたらしい
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    408
    IA03002 (2022-10-06 評価=4.00)

    二つの死で、私は「死ぬ順番は病気の悪い順じゃない」ことに気付いて、ほっとしたような気になった。人夫達は伐り取った栗の木の跡を花壇に変えようとしていた

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    369
    IA03003 (2022-10-06 評価=5.00)

    *** 父がサナトリウムに立ち寄るという手紙が来て、節子は目を輝かせた。十月になると彼女は寝たきりで食欲も衰えていたが、つとめて食事をし、ベッドの上に起きたりした
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    387
    IA03004 (2022-10-06 評価=5.00)

    数日後、彼女の父がやって来た。病人は安静を命じられていたので、父は彼女の枕元に腰をおろし、不安そうにしていた