千葉の農家に生まれた政夫と、民子の清純な恋の物語。習慣も価値観も異なる明治時代の話ながら、涙が止まらなくなる伊藤佐千夫の不朽の名作です
- IA04363 (2024-11-28 評価=5.00)
お増は「その日は三人で話したけれども、嫂がしつこく言って、とうとう民子を市川の実家へ帰すことになった」と説明した。僕は涙が止まらず、しばらく畑をうろついていた - IA04364 (2024-11-28 評価=4.00)
僕は家にいるのが厭になり、正月2日に学校へ戻った。市川から汽車に乗る際、民子の家の近くを通った。昔は家に気楽に立ち寄れたのに、きまりが悪くてとうとう立ち寄れなかった - IA04365 (2024-11-29 評価=4.00)
以前は平気だったのに、恋を覚えてからは恥ずかしくなったのだ。さて、1年経って、また大晦日に実家に帰った。1月2日に戻ろうとすると母が民子は嫁に行った、と簡単にいう - IA04366 (2024-11-29 評価=5.00)
だが僕の心持ちは不思議なほど平気であった。民子への感情に何らの動揺もなく、民子の心も変わらぬものと確信があったからだ。ただ、民子が元気をなくしていないかと心配だった - IA04367 (2024-11-30 評価=5.00)
僕の方はなるべく人を避け、独りで茄子畑や綿畑、矢切の渡しの別れを思い出し、民子に思いを馳せて楽しんでいた。なぜか民子の事を思っていれば学課の成績も悪くなかった - IA04368 (2024-11-30 評価=5.00)
6月22日、スグカエレという電報が来たので即日帰省した。家に着くと伏せっている母の寝所へきた。母は涙を落として俯いている - IA04369 (2024-12-01 評価=5.00)
「政夫、堪忍してくれ、民子は死んでしまった。お前に話もせず、いやだという民子を無理に嫁にやったのが、取り返しのつかぬことをしてしまった。堪忍してくれ」と母は言った - IA04370 (2024-12-01 評価=5.00)
僕がおろおろしていると嫂が説明してくれた。市川の財産のある某という家が民子を所望、世話になった人が仲人でもあり、皆で本人を説得しようとしたが、民子は承諾しなかった - IA04371 (2024-12-02 評価=5.00)
母が民子に僕との結婚は不承知だと説得すると、ついに民子は諦めて結婚を承諾した。民子は結婚し妊娠したものの6カ月で流産、肥立ちが悪く6月19日に息を引き取ったというのだ - IA04372 (2024-12-02 評価=5.00)
母は、私が殺した様なものだと半気違いになって、泣き通す。少し落ち着いても「私はなんだってあんなひどいことを民子に言ったっけか……」と嘆く - IA04373 (2024-12-04 評価=5.00)
母は泣きながら「私が悪党を言うた為に民子は死んだ。政夫、明朝民子の墓に参ってくれ」と頼む。僕もどうして市川を三回も通ったのにたずねなかったのだろう、と残念に思った - IA04374 (2024-12-04 評価=5.00)
僕は心を取り直し「お母さん、返らぬ事をいくら悔やんでも仕方がありません。民子のためと思って言った事ですから、民子や私等がどうして母さんを恨みましょう」と言った - IA04375 (2024-12-05 評価=5.00)
だが母はさらに長々と後悔の言葉を続け、声をくもらした。話せば話すほど悲しくなるので皆寝ることにした。泣くのをこらえていた僕は、蒲団に倒れ込むと涙を絞った - IA04376 (2024-12-05 評価=5.00)
朝母から声を掛けられるまで、涙は止まらなかった。僕はほの暗い中家を出、民子の実家まで8キロの路を走った。縁先に立つと民子の家族が出て来てくれた - IA04377 (2024-12-07 評価=5.00)
「民さんのお墓に参りにきました」と言うと、皆で参ることになり、水や線香と庭の花を採って出かけた。六坪ほどの戸村家の墓地にある新墓が民子の永久の住み家であった - IA04378 (2024-12-07 評価=5.00)
お祖母さんが「政夫さん、せめてあなたを一度でも民子に逢わせてやりたかった。あなたの手でやって下さい」と言うので、香や花を上げ、心ゆくまで拝んだ。哀れでならなかった - IA04379 (2024-12-08 評価=5.00)
我知らず声を出し、僕は両膝と両手を地べたへ突いてしまった。僕の様子を見て、後ろの人も泣き、「それほどに思い合ってる仲と知っていたら……」などと言っていた - IA04380 (2024-12-08 評価=5.00)
僕は死者に供える力紙を力杖に結んだ。ふと、野菊を植えればよかったと思いながら周囲を見ると、辺りには野菊が繁っていた。民さんは野菊の中に葬られたのだ。僕は墓場を辞した - IA04381 (2024-12-09 評価=5.00)
民子のお母さんが、自分たちが民子にふびんな死にようをさせ、僕にも申し訳ないことをしたと詫びた。そして民子の死に際の様子などを伝えたいと、家に招いた - IA04382 (2024-12-09 評価=5.00)
民子のお祖母さんは「あなたと民子は前から仲良しでしたから、誰も二人が深い間とは気付かなかったのです。あなたに合わせる顔がありません、ご勘弁ください」と言った