プロレタリア文学の金字塔「蟹工船(かにこうせん)」。極寒の海で過酷な作業を強いられる労働者たちは搾取に耐えかね、連帯することにした……
- IA04590 (2025-04-13)
監督の浅川が来て「仕事もできない日に大飯食いやがって」と毒づいて出て行くと、何人かの労働者は彼の悪口を言った。夜になり、監督は寝ている人間の顔をカンテラで確認しに来た - IA04591 (2025-04-14)
監督は調理室も調べて戻った。翌朝、雑夫の一人が行方不明になったことが判った。皆は波にさらわれたのではと思ったが、監督は棍棒を振り回しながら船内を探し歩いた - IA04592 (2025-04-14)
時化(しけ)はピークを過ぎてはいたが、雨は止まない。学生上がりがデッキを渡ってゆくと、タラップを上がってきた給仕が「面白いことがあるんだよ」と言い出した - IA04593 (2025-04-15)
今朝二時頃、無電係が秩父丸からのSOSを受信し、船長に知らせた。船長はすぐに操舵室に上がろうとしたが、浅川がそれを制止し「余計な寄り道をするな」と注意したという - IA04594 (2025-04-15)
監督の浅川が「この船は会社が傭船しているから、船長でも大きな顔をするな。秩父丸には保険がつけてあるし、かかわるな」と強く言い、船長は立ちすくんだ - IA04595 (2025-04-16)
給仕は船長の言葉が通らない理由が理解できなかったが、皆で無電室に行った。無電係は「こんなにSOSを何度も打って来ているんです」と船長や監督に説明した - IA04596 (2025-04-16)
通信が途絶えた。無電係が「乗務員425人、救助される見込みなし、SOS。これが二・三度続いて切れてしまいました」と言った。船長は苦しそうに頭をゆすった - IA04597 (2025-04-17)
……学生上がりは、秩父丸同様のボロ船に乗っている自分達が気になる様子だった。金利が下がって金がダブつくと、さらなる利潤を求める資本家は、船一艘で大金が手に入る蟹工船に手を出すのだ - IA04598 (2025-04-17)
蟹工船は客や荷物を輸送する航船とは違い、工場船で航海法が適用されないため、廃棄寸前のボロ船が用いられた。しかも工場であっても工場法は適用されない。船主には都合がよかった - IA04599 (2025-04-18)
船主は「日本帝国」とうまく結びつけて金を儲け、さらに代議士への出馬も考えていた。さて、糞壺の壁に「(行方不明の)宮口を発見した者に賞与を与える」という紙が浅川監督の名前で貼りだされた - IA04600 (2025-04-18)
■三 博光丸は沖合7キロ付近に投錨し、カニ漁の準備が終わると、漁夫達はゴロ寝をした。東京の学生上がりが給料から経費を引くと借金しか残らない、周旋屋に騙された、と不平をもらした - IA04601 (2025-04-19)
悪い食事で学生は皆身体のぐあいを悪くし、足のむくみやしびれの有無で脚気かどうか確かめた。数日通じがなく、通じ薬を船医に貰おうとした者もいた。だが、船医は薬を持っていなかった - IA04602 (2025-04-19)
監督がやって来て秩父丸沈没の話をしたので、学生は怒りを感じた。行方不明の雑夫は出て来たところを中年過ぎの漁夫につかまった。若い漁夫がその漁夫に反発した - IA04603 (2025-04-20)
隠れていた宮口という雑夫は監督にシャツ一枚にされると便所に二日ほど監禁され、死んだような状態で解放された。監督は朝早くから病気のものも仕事に引きずり出していた - IA04604 (2025-04-20)
雑夫長は雑夫を十数人工場に追いこみ、衰弱していた宮口も働かそうとしたが、さすがに出来なかった。監督が風邪をこじらせて肋膜を悪くした、ふらふらの雑夫を連れて甲板に来た - IA04605 (2025-04-21)
その男は寒さに堪えられずボイラー室にいた所を見付かったのだとういう。監督は甲板を棍棒で叩きながら「風邪を引いたり、ふて寝されるために連れて来たんじゃねえ」と怒鳴った - IA04606 (2025-04-21)
ウインチが回り、川崎船が海に降ろされた。それを見た元炭坑夫の漁夫が「やっぱし死ぬ思いをしないと生きられない」とつぶやく。昼過ぎから空模様が怪しくなった - IA04608 (2025-04-22) NEW
漁夫と水夫が騒いでいた。今朝、突風のため川崎船を呼び戻すよう警戒報を受け取ったにも拘わらず監督が「こんな事でビクビクできるか」と言ったからだった