プロレタリア文学の金字塔「蟹工船(かにこうせん)」。極寒の海で過酷な作業を強いられる労働者たちは搾取に耐えかね、連帯することにした……
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そういう面はあるかも知れなかった。だが皆身体が温まってくると、怒りがこみあげてきた。誰かが「殺されたくねえで」と言った - IA04630 (2025-05-06) NEW
「こ、殺されてたまるもんか!」どもりの漁夫が大声を出すと、皆次々と声を上げた。「帰りてえ」「カムサツカで死にたくない」「カムサツカに逃げた奴もいるって」「儲けるのは金持ちだけ」 - IA04632 (2025-05-07) NEW
そして、お互い今までしてきた事などを話した。国道開拓工事、灌漑工事、鉄道敷設、築港埋め立て、新鉱発掘、開墾、積み取り人夫、ニシン取り、みな重労働に従事していた - IA04633 (2025-05-08) NEW
資本家は内地を開拓しつくすと、北海道・樺太へ進出し、労働者を虐使をした。国道開拓・鉄道敷設現場では、逃亡した労働者を馬に蹴らせたり、土佐犬に噛み殺させたりした - IA04634 (2025-05-08) NEW
焼け火箸をいきなり尻にあてられたり、六角棒でなぐりつけられることは毎日だった。脚気で死んだ者は何日もムシロをかけて放っておかれた - IA04635 (2025-05-09) NEW
死体にはハエがたかる。監獄の囚人を羨ましがる程、一日中働かされる状況で、特に朝鮮人はひどい差別待遇を受けた。取り調べの巡査も土方達を相手にはしなかった - IA04636 (2025-05-09) NEW
北海道の鉄道の枕木は労働者の死骸のようなものだ。港の埋め立てでは脚気の土工を埋めたようなものだ。そういう使い捨て労働者はタコと呼ばれ、国家資源開発という名目で搾取された - IA04637 (2025-05-10) NEW
鉱山も同じだった。坑道にガスが出るかなど危険な変化を調べるためにも、安価な労働者を使い捨てた。トロッコの石炭に切断された手指が混じっていたこともあった - IA04638 (2025-05-10) NEW
不健康な仕事のため、眼に見えて身体がおかしくなっても、代わりの労働者はたくさんいた。また、甘言で誘われ、北海道の不毛の土地に開拓移民として放り出された百姓たちもいた - IA04639 (2025-05-11) NEW
雪の中で一家が餓死することもあった。餓死からかろうじて逃れ畑を十年耕しても、その畑は金貸しに奪われた。彼等は内地同様「小作人」にされてから「しまった!」と気付くのだった - IA04640 (2025-05-11) NEW
物資の積み込みを行う積み取り人夫は、蟹工船の漁夫と同様、小樽の下宿屋から樺太・北海道の奥地へ連れて行かれ、死と隣合わせの作業を行わされた - IA04641 (2025-05-13) NEW
誰かが「殺されるのさ」と言うと、どもりが「そ、その前に殺してやる」と言った。彼等は寝る前にシャツを脱いでストーブの上に広げる。シラミや南京虫が落ちて焼けるのだった - IA04642 (2025-05-13) NEW
歯や爪でシラミをつぶす漁夫もいたが、結局夜通しシラミと蚤と南京虫に責められ、眠れないのだった。体が腐っているような気がする、と言う者もいた - IA04643 (2025-05-15) NEW
水の濫費を防ぐため、船長や監督を除き、お湯は一日おきから月二回に減らされた。シラミや南京虫が湧かない筈がなく、ゼンマイのような虫まで身体の下側を走り、刺す始末だった - IA04645 (2025-05-16) NEW
雑夫の一人がウインチの腕に身体を縛られて吊るし上げられていたのだ。二十分も吊り下げられた後、ウィンチは下がって大工からは見えなくなった - IA04646 (2025-05-16) NEW
雑夫は、雑夫長に薪でなぐられてから吊し上げられたように大工には思えた。平素から漁夫達が過労で朝起きないと、監督は石油缶をたたき「国家的な仕事だ、死ぬ覚悟で働け」と言った - IA04647 (2025-05-18) NEW
病人も甲板へ押し出された。監督や雑夫長は楽な肉詰め作業をしている者がいると、蟹の爪から肉を押し出す「爪たたき」や「紙巻き」作業に回した。そのうち爪たたきをしていた学生が倒れた - IA04648 (2025-05-18) NEW
仲間が学生をハッチへ連れて行こうとすると、監督が「仕事を離れるな」と言ってピストルで脅した上、学生に桶の水を浴びせかけた。翌日には、その学生が鉄柱に縛り付けられていた