プロレタリア文学の金字塔「蟹工船(かにこうせん)」。極寒の海で過酷な作業を強いられる労働者たちは搾取に耐えかね、連帯することにした……
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学生は冷え切っていた。漁が忙しくなると監督の横暴は激しさを増し、前歯を折られたり、叩かれて耳が聞こえなくなる者も出た。作業時間も終了直前に延長された - IA04650 (2025-05-19) NEW
監督は糞壺に来て「蟹が採れない時は暇なんだ。採れる時に長時間働くのは当たり前だ。ロシア人は仕事をぶん投げるそうだが、日本人は違うんだ」などと理屈を言った - IA04651 (2025-05-20) NEW
甲板から日の丸をはためかせた駆逐艦が見えると、漁夫等は涙をためて帽子を振った。二百人近い彼等は疲れて帰った糞壺で毎日しゃべり合ううちに、ある意見がまとまり始めた - IA04652 (2025-05-20) NEW
もちろん消極的な者や、別の考えを持つ漁夫もあり、考え方は一つではなかった。そんなある日、炭山から来た男が、前日タラップを踏み外して体を痛め「もう続かねえ、仕事をサボる」と言った - IA04653 (2025-05-21) NEW
炭山は「おらあ、ずるでサボるんじゃねえ」と付け加えた。すると、その日殆ど全員がノロノロと仕事をした。監督は歩きまわるだけで叱責できなかったので、仕事後、皆は大笑いした - IA04654 (2025-05-21) NEW
漁夫たちの様子を見て、船員もサボるようになった。と言っても、ただ身体を楽に使うということでしかなかったが――。そんなとき、中積み船がやって来た