プロレタリア文学の金字塔「蟹工船(かにこうせん)」。極寒の海で過酷な作業を強いられる労働者たちは搾取に耐えかね、連帯することにした……
- IA04669 (2025-06-02)
上の人間は儲けをたくらみ、漁夫や船員は惨めな生活に追い込まれていた。給仕は何かが起こりそうだと思った。二時頃、監督等は発動機船で駆逐艦にみやげの缶詰を届けに行った - IA04670 (2025-06-02)
夕方、駆逐艦は出発した。給仕が糞壺で、この船はロシアの領地へ潜入して漁をするらしい、という話をした。軍はカムサツカや北樺太などを日本のものにしたいという - IA04671 (2025-06-03)
「蟹工船の会社は三菱等と一緒に政府に圧力をかけている。駆逐艦の目的も測量や気候調査で、これまでのどの戦争だって、二三人の金持ちの指図で起こっているのさ」と給仕は言った - IA04672 (2025-06-03)
■七 川崎船が下がってきた。歯車のぐあいで片方のワイヤーがたれ下がり、下にいた漁夫に当たった。漁夫達は怪我をした彼を船医のところへ抱えこみ、診断書をもらおうとした - IA04674 (2025-06-04)
怪我をした漁夫は生命をとりとめた。だが脚気で寝たきりだった27歳の漁夫が死んだ。仲間と共に日暮里の周旋屋から来た男だったが、病気のものだけでお通夜をすることになった - IA04675 (2025-06-05)
湯で個人を清めるために着物を解くと、虱が走り出した。垢や乾いた排泄物などでひどく汚れていて臭気もひどかった。「カムサツカで死にたくない」と言っていたそうで、泣く漁夫もいた - IA04676 (2025-06-05)
お湯を貰って来た漁夫は、監督に「ぜいたくに使うな」と言われ、お湯をぶっかけたかった、と憤慨していた。皆でお通夜をすることになり、漁夫の一人が片言のお経をあげることになった - IA04677 (2025-06-06)
お経の間は静かだったが、座が崩れると、どもりの漁夫が「俺はお経で山田君の霊を慰めることは出来ないが、彼はどんなに死にたく――いや殺されたくなかっただろう」と悲しんだ - IA04678 (2025-06-06)
「山田君の仇をとれば、彼を慰めることが出来る。彼の霊にそれを誓おう」とどもりが言うと、船員たちがまっ先に同意した。だが、夜九時になると皆眠り込んでしまった - IA04679 (2025-06-09)
監督が新しい麻袋を使うことを許さなかったので彼の死体は古い麻袋につめられた。涙を流しながら「カムサツカのしゃっこい水さ入りたくねえって言ってるんじゃないか」と言う者もいた - IA04680 (2025-06-09)
三、四百人も乗っている船にも拘わらず彼の身体を袋に入れたのは六、七人だった。さらに船長が弔辞を読む予定だったが、監督に「悠長なことしてれるか」と省略させられた - IA04681 (2025-06-10)
発動機付き小型船の川崎船は、積み込んだ麻袋を遺棄するために蟹工船から離れていった。漁夫たちは漁から帰ってきたが、自分たちの身体が遺棄される未来を想像してぞっとした - IA04682 (2025-06-10)
■八 水葬後は「サボ」の足並みがそろい、仕事量はかなり減った。ただ実際に漁を行う川崎船の船頭がいたため、サボを行ったのは三分の一で、残りは監督側の言う通り仕事をした - IA04683 (2025-06-11)
川崎船の船頭は監督と同じ様に「相手は生き物だ」と仕事をするよう求めていたが、ある日少し威張った物言いをした。酔った平漁夫が怒って「威張んな、この野郎。海に落とすぞ」と叫んだ - IA04684 (2025-06-11)
その言葉は思いがけず漁夫たちを動かし、反抗的な気持ちを皆の心に浸透させた。監督も糞もなく、皆、自分たちがうじ虫のような生活をさせられていることに気づいたのだ - IA04685 (2025-06-12)
「威張んな、この野郎」という言葉が流行し、いつしか「学生あがり」二人と「どもりの漁夫」「威張んなの漁夫」がまとめ役になり、皆その通り動くようになった - IA04686 (2025-06-12)
学生上がりが連絡役のABC3グループを定めた。Aはまとめ役の4人。Bは雑夫、川崎船、水夫、火夫から担当者一人ずつ。Cはそれ以外の中から数名。彼等が情報共有できるよう連絡網を定めた - IA04687 (2025-06-14) NEW
労働者は400人、船長側は10人以下で、劣悪な環境の中、争えば労働者側が勝つことは明らかだった。そして、発動機船の修繕で陸に行った際、若い漁夫が赤化宣伝ビラなどを持って来た - IA04688 (2025-06-14) NEW
賃金、労働条件、ストライキや会社の金儲け等の内容が書かれていて、反発する者もいたが、多くは面白がった。霧が深くなったので本船は川崎船を呼ぶため、汽笛を鳴らし続けていた