プロレタリア文学の金字塔「蟹工船(かにこうせん)」。極寒の海で過酷な作業を強いられる労働者たちは搾取に耐えかね、連帯することにした……
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そんな時、わざとカムサツカに漂流し、戻ってきた川崎船が「赤化」のことを聞いてきた。本来船には労働組合等に興味のない者ばかり雇われていたが、いま労働者は団結しようとしていた - IA04690 (2025-06-15) NEW
■九 監督は蟹の高が減り、あわて出した。他の船の網を上げさせるようになり、発見された川崎船が逃げ帰ることもあったが、仕事は忙しくなった - IA04691 (2025-06-16) NEW
仕事を怠けた場合に罰を与え、反抗する者は銃殺する、というビラが監督と雑夫長の連名で工場の降り口に貼られた。監督は水夫や火夫を味方につけて、示威のため時折り発砲した - IA04692 (2025-06-16) NEW
監督は船長にロシアの領海に入って漁をするよう強要したが、ロシアの監視船に見つかると対応を船長に押しつけた。船長は船を函館に帰そうと考えたが、資本家には抵抗できなかった - IA04693 (2025-06-17) NEW
どもりの漁夫や学生らは、監督のビラで組織化運動の腰を折られたことが残念だった。だが学生は「俺達には不平と不満がつまってる。何かあったら跳ね起きるんだ」と言った - IA04694 (2025-06-17) NEW
だが、威張んなの漁夫は学生に批判的だった。監督は反抗する者が出ないよう、監視を怠らなかったので、学生や威張んなの漁夫に対し殺されそうになってからやるよ、と言う者がいた - IA04695 (2025-06-18) NEW
芝浦から来た漁夫が「きゃつ等は俺達をウンと働かせてしこたま儲けてるんだぞ。俺達は蚕に食われる桑の葉のようなもんだ」と言った。そのうち、船の移動のため、早めに仕事が終わった - IA04696 (2025-06-18) NEW
脚気をわずらい「仕方ねえ」と言った男がいた。芝浦から来た漁夫が「殺される時も仕方ねえか」と揶揄すると、どもりの漁夫が「金持ちが金を出したから船があるとしてもいい」と言い始めた - IA04697 (2025-06-19) NEW
「金持ちはこの船一艘で40~50万円(現在の8億円程)の手取りがある。だが、労働者が働かねば、一文も彼等の懐には入らない。金持ちと俺達とは親と子なんだ」と言った - IA04698 (2025-06-19) NEW
■十 午前二時には夜が明け、カムサツカの連峰が金紫色に輝いていた。だが、風が強く、海には兎のような三角波が立っている。大暴風が予想された - IA04699 (2025-06-21) NEW
一時間程後、荒れた海を見ていた漁夫達は川崎船を半降ろし状態のまま、「引き上げよう」と言い始めた。顔をしかめた漁夫もいたが、多くは引き上げに賛同しつつあった - IA04700 (2025-06-21) NEW
川崎船での出漁を諦めた各船の漁夫達が引き上げ始めた。帰り渋っている漁夫たちにどもりの漁夫が、一緒に帰るよう声をかけた - IA04701 (2025-06-23) NEW
「大暴風になると分かって船を出させるんだから、人殺しだべ」と言う漁夫がいた。皆糞壺へ引き上げると、どもりの漁夫と学生が機関室へ降りて行った - IA04703 (2025-06-24) NEW
どもりの漁夫が火夫に声をかけ「ストライキを始めたんだ。皆勢揃いしたらねじ込もう」と言った。火夫が面白がり「やれ、やれ!」と言ったのを学生が「やろう、やろうだ」と訂正した - IA04704 (2025-06-24) NEW
その火夫には火夫らへの連絡役を頼んだ。まとめ役らが要求事項を決めていると、雑夫、火夫、水夫らが集まってきたので、どもりの漁夫が「諸君、とうとう来た!」と皆の前でスピーチを始めた - IA04705 (2025-06-25) NEW
彼は「俺達は力を合わせる。そうすれば裏切り者、落伍者、寝返り者は出ない。団結して交渉すれば、必ず彼奴等をタタキのめせる」と強調した。続いて火夫代表が立った - IA04706 (2025-06-25) NEW
火夫の後に壇に立ったのは十五、六歳の雑夫だった。彼は「私達がどれだけ苦しめられ、ひどい目にあったか。身体に生キズのない者などいないのです」と訴えた - IA04707 (2025-06-27) NEW
若い雑夫の涙のスピーチに、嵐の様な拍手が起こった。代表らが要求条項と誓約書を持って船長室に向かう事となり、どもりの音頭で三百人が「ストライキ万歳」と三度叫んだ - IA04708 (2025-06-27) NEW
皆は船長室へ押しかけると、船長、雑夫長、工場代表らが彼等を迎えた。すると監督が落ち着いて「後悔しないか」とゆっくり言った