「青鬼の褌(ふんどし)を洗う女」は専務のオメカケとなるサチ子が多くの恋をし自分に正直に生きる姿を描く坂口安吾の実験的作品。軽妙な文体で入しやすい
- IA03951 (2024-01-25 評価=4.00)
盲目的な媚態が激痛を薄めてはいたが、久須美が気付いて医師を迎えると、盲腸はうみただれ、手術に三時間かかった。さて若い目が秘密に笑いあう時、妖しさと同時に退屈もある - IA03952 (2024-01-25 評価=5.00)
美青年と泊まりたわむれても、遊びの後で退屈する。しかし久須美の愛撫に我を忘れる時、私のまごころは優しさと感謝でいっぱいになる。私はオメカケ性なのだろう - IA03953 (2024-01-26 評価=4.00)
要するに私は天性の職業婦人で、好きな生活の返礼が媚態であり、洗濯や料理などをしてあげたいと考えたこともない。しかし、可愛がられる事に反抗したい気持ちになることもあった - IA03954 (2024-01-26 評価=5.00)
ふと我にかえると、東京を母を焼いた火が見えた。避難民の中で私は何かを待ち、無一物と不幸を夜明けと見ていたが、今では地獄に思える。私がもはや無一物ではないからだろうか - IA03955 (2024-01-26 評価=5.00)
入院中に一緒になった十両の墨田川は、出征の前夜私が許した一人で、私に結婚してくれと言ったので、やんわり断った。墨田川は有望視された力士だったが、ねばりがなかった - IA03956 (2024-01-26 評価=5.00)
稽古の時は地力があるのに、本場所ではネバリぬく執拗さが足りない。強い相手には勝つのに、シマッタと思うと弱い相手にやられてしまう。性格も力量のうちなのだろうか - IA03957 (2024-01-29 評価=5.00)
相撲では電光石火の勝負の裏に多くの心理の時間がある。横綱でも投げにかけられる一瞬前にアキラメが流れる。私にはシマッタという大きな声がきこえる気がするのだ - IA03958 (2024-01-29 評価=5.00)
相撲の勝負はシマッタと思ったら、勝負はそれまで。力士の心が単純でアッサリしているのは、力と技の一瞬に心理と思考を一気に感じ、一度のシマッタでケリがつくからだろう - IA03959 (2024-01-30 評価=5.00)
墨田川は町内でエッちゃんと呼ばれていたが、一瞬の顔色が叫び声のようにも感じ、相撲を見ていられない気持ちになる。私は何クソとねばれば、大関横綱にもなれるのよ、と言った - IA03960 (2024-01-30 評価=4.00)
この忠言は彼を発奮させて、二三度は勝った。だが気がぬけたように次の相撲では負けてしまった。その後、彼は自信を失い、私がはげましてもネバれなくなり、負けるようになった - IA03961 (2024-01-31 評価=5.00)
未来の横綱といわれていても、心のデリケートな彼はついに三段目に落ちた。ハッキリ勝敗がつく相撲は残酷で、ウヌボレる余地もない。私は彼が負けた時には慰めたい気持ちだった - IA03962 (2024-01-31 評価=5.00)
場所の始まる前、彼はこう言った。「僕は本場所が重荷なんだ。だけど、サチ子さんが好きなんだから仕方ない、相手にしてもらえるよう、裸ショウバイに精を出しているんだ (続く) - IA03963 (2024-02-01 評価=5.00)
(続き) 旦那のいるオメカケが浮気をするとバチが当たるだろうけど、僕の心の励みはあなた一人。巡業に出ているうちは忘れられるから、東京に戻った時だけ遊んで貰えないか」 - IA03964 (2024-02-01 評価=5.00)
その場所、十両の彼は入幕が目前だったから出世させてあげたいと思い、全勝したら泊まりにいく約束をした。ところが、本人は張り切っていたものの、最初の日から負けが続いた - IA03965 (2024-02-02 評価=5.00)
その結果、彼は全敗した。私は彼がいじらしくなり、久須美の事も忘れ、温泉旅館へ行こうと誘った。彼は明日から花相撲があると渋ったが、私は朝の汽車で帰ればいい、と言った - IA03966 (2024-02-02 評価=4.00)
私は気持ちが引きこまれて、打ちこんだことをやりだした。温泉で彼にお酒をすすめ、寝床につくと「全勝してなんて、人間侮蔑だったわ」と謝った。彼はわけが分からない顔をした - IA03967 (2024-02-03 評価=5.00)
私の天然自然の媚態に、翌日のエッちゃんは明るさをとりもどし、私の気分を軽快にした。「人間侮蔑ってなんのことだい、女のセンチ?」という彼の問いには「まあ、そうよ」と答えた - IA03968 (2024-02-03 評価=5.00)
「花相撲はフッツリよした。たまにゃあ人間になりてえ」と彼が言い、ノンビリすることになった。私たちは米を持っておらず、旅館にもなかったので、彼が求めるまま財布を渡した - IA03969 (2024-02-04 評価=5.00)
エッちゃんはお米と鶏、卵をしこたま持って戻って来た。「チョンマゲだよ。みんなお相撲が腹がへっちゃあ可哀そうって、出してくれたんだ」と言う。チョンマゲのご利益だ - IA03970 (2024-02-04 評価=4.00)
★ お金が不足してきたので二つ年下のノブ子さんに届けてもらった。彼女は私の家に同居中の元同僚で、会社の田代さんが開いた一杯のみ屋のマダムになったが、田代さんと一緒に来た