モリーオ市の職員キューストは、人々が集うという伝説のポラーノの広場を探し始める……。作者の生涯を投影した作品とも言われる宮沢賢治代表作の一つ
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私(レオーノ・キュースト)はモリーオ市博物局の下級職員でしたが、競馬場を植物園に改築するにあたり、その番小屋にひとり宿直することになり、一匹の山羊を飼いました - IA04408 (2024-12-16) NEW
私はそこから毎日市役所へ通いました。その間、ファゼーロとロザーロ、羊飼いミーロ、地主テーモ、山猫博士デストゥパーゴらと一緒になったので、5~10月の出来事を書きつけましょう - IA04409 (2024-12-17) NEW
■1、逃げた山羊 五月下旬の日曜の朝、山羊がいなくなりました。近くを見まわしましたがどこにもいません。私は山羊が帰ってくるかどうか心配でした - IA04410 (2024-12-17) NEW
私は山羊が連れられて来た路をなんとなく野原の方へ歩き出し、いつの間にか西南の村へいく路に入りました。すると、向こうから百姓のおかみさんたちが歩いてきました - IA04411 (2024-12-18) NEW
「こっちに山羊が一匹迷って来ていませんでしたか?」と尋ねると「さあ、私たちはまっすぐに来ただけですから」と答えました。私は散歩のつもりでもう少し行くことにしました - IA04412 (2024-12-18) NEW
二人の若者が歩いて来たので同じように尋ねると「向こうからファゼーロらしい人が山羊を連れて来ますよ」と教えてくれました。私は彼の方へ歩いて行きました - IA04413 (2024-12-19) NEW
それは山羊を連れた、頬の赤いチョッキを着た17歳位の子供で「おまえんだろう、やるよ」と言いました。私が競馬場に帰ると話すと、彼は「僕は戻るから、さよなら」と言いました - IA04414 (2024-12-19) NEW
私がお礼に磁石のついた時計の鎖をあげようとすると、彼は「磁石じゃ探せないからいらない」と断ります。何を探したいのか尋ねると「ポラーノの広場」だと答えました - IA04415 (2024-12-20) NEW
私も祭りのあった所だと聞いてはいたが、ファゼーロはこの頃もあるらしく、音が聞こえるが行こうとしても道が判らないんだと言う。そこで私は地図を買ってあげる事にした - IA04416 (2024-12-20) NEW
ファゼーロは姉さんと一緒に県の議員のボーガント・デストゥパーゴの所に雇われているそうで「今度、ひまを見付けてお前の家に行く」と言った。その時後ろで大きな声がした - IA04417 (2024-12-21) NEW
声の主は頑丈そうな年寄りの百姓で「早く仕事へ行け」とファゼーロに言ったので、私はファゼーロに役所から帰る時間を伝えました。百姓は彼に「走って行け」と革むちを鳴らしました - IA04418 (2024-12-21) NEW
百姓は「この鞭は馬を追う鞭ですよ」と言って鞭を鳴らしたので、私は腹が立ちましたが我慢しました。私が山羊を追いはじめると、百姓はファゼーロの方に去りました - IA04419 (2024-12-22) NEW
■2、つめくさのあかり 十日ほど後ファゼーロが私の所に来ました。彼の旦那はテーモといい、役所にも果物等を納めているそうです。私は地図を広げました - IA04420 (2024-12-22) NEW
ファゼーロは一緒に来た三つ程年上のミーロを呼び、床に置いた地図を一緒に見ました。ミーロはムラードの森のはずれにある乾留工場を探しましたが、地図が古くて見つかりません - IA04421 (2024-12-23) NEW
しかし、森の木は楢か樺だというのでおおよその場所がわかったので、早速三人で行ってみることになりました。日はもう落ちて空は青く古い池のようでした - IA04422 (2024-12-23) NEW
歩きながらファゼーロが「広場にはオーケストラでもお酒でも何でもあってみんなを連れて行きたいんだ。それに誰でも歌が上手に歌えるらしい」と言いました。ミーロもうなずきました - IA04423 (2024-12-24) NEW
ファゼーロが、小さい頃ふくろうの声に導かれて道に迷い、以降お母さんがよく「ふくろうに気をつけて」と言ったという話をしました。僕が「お母さんは?」と尋ねると「いない」と答えました - IA04424 (2024-12-24) NEW
ファゼーロは姉さんは旦那の希望で、山猫博士とも呼ばれているデストゥパーゴのとこに行くかもしれない、という話をしました。そうして彼はつめくさのあかりがついた、と言いました - IA04425 (2024-12-25) NEW
つめくさの花のあかりは、蛾の形の青白いあかりの集まりで、花には番号が付いています。私たちはしゃがんで花の数字を確認してみました - IA04426 (2024-12-25) NEW
私は、花の数字は目の間違いだろうから、広場の音がしたらまっすぐそっちに行こう、と提案しました。私どもはつめくさのあかりで縞のようになった野原を歩きました