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地獄変 (芥川龍之介) 76分割入力文の数= 76 <<  1  2  3  4   >>

平安時代の高名な絵師、良秀(よしひで)の物語。屏風絵「地獄変」を描く際に彼の傲慢な性格が招いた悲劇とは…。芥川龍之介の代表作

作家や目的で選ぶ

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    投稿 TypetrekJさん
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    398
    IA03128 (2022-12-04 評価=3.33)

    ■一 堀川の大殿様は、生まれつき並の人間とは違って、思い切った所がありました。とはいえ、自分の栄耀栄華ばかりを考える方ではありませんでした
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    投稿 TypetrekJさん
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    420
    IA03129 (2022-12-04 評価=3.50)

    大殿様には下々の事までお考えになる器量があり、洛中の老若男女に仏のように尊敬されていましたので、後々まで語り草になるような事がたくさんございました

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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    426
    IA03130 (2022-12-05 評価=4.00)

    大殿様は変わった逸事がたくさんある方ですが、中でも地獄変の屏風の由来ほど、恐ろしい話はありません。まず屏風を描いた絵師、良秀の事を申し上げます
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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    414
    IA03131 (2022-12-05 評価=4.00)

    ■二 良秀は絵師として高名でしたが、痩せて背の低い意地悪そうな老人で、人がらも卑しく、口が悪く立ち居振る舞いも猿のようで、猿秀というあだ名まで付けられていました

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    投稿 TypetrekJさん
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    429
    IA03132 (2022-12-06 評価=5.00)

    邸に手伝いで上がっていた十五になる良秀の一人娘が、利巧で愛嬌があり、奥方や女房らにも可愛がられていました。その頃猿を献上した者がいて、若殿様が良秀と名づけました
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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    432
    IA03133 (2022-12-06 評価=5.00)

    ある日、その小猿が若殿様に「みかん盗人」と追いかけられました。小猿に助けを求められた良秀の娘は、小腰をかがめ「畜生でございます。ご勘弁ください」と申し上げたのです

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    314
    IA03134 (2022-12-07 評価=5.00)

    若殿様は難しいお顔をされましたが、娘が「父が折檻を受けているようで、見てはいられませぬ」と申しあげたので、若殿様は不承不承お許しになったのです
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    400
    IA03135 (2022-12-08 評価=5.00)

    ■三 小猿は娘の回りを離れなくなり、若殿様も含め皆小猿を可愛がるようになりまし。侍が猿を足蹴にした際には若殿様がご立腹になり、大殿様が娘をお呼びになるほどでした

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    投稿 TypetrekJさん
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    376
    IA03136 (2022-12-08 評価=5.00)

    大殿様は娘に紅の表着の下に着用するあこめ(衣服)を褒美に与えました。これは、大殿様が孝行娘をひいきにしただけで、色をお好みになった訳ではありません
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    312
    IA03137 (2022-12-09 評価=5.00)

    それ以来、娘は猿と一緒に何かといとしがられたのですが、かんじんの親の良秀は、誰にでも嫌われて、相変わらず陰で猿秀呼ばわりされておりました

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    投稿 TypetrekJさん
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    337
    IA03138 (2022-12-09 評価=4.00)

    良秀は、横川の僧都様にも(その行状を良秀が戯れ絵に描いたせいか)憎まれるほど不評判でした。しかし、良秀はもっと人に嫌がられる悪い癖があったのです
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    投稿 TypetrekJさん
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    358
    IA03139 (2022-12-10 評価=5.00)

    ■四 その癖とは、良秀がけちで恥知らずで怠けもので強欲で、かつ本朝第一の絵師だと鼻にかける事でした。世間の習慣(ならわし)や慣例(しきたり)まで莫迦にするのです

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    413
    IA03140 (2022-12-10 評価=4.00)

    当時の彼は、自分程偉い人間はいないと思っていました。あの男の絵は筆使いや彩色がほかの絵師とは異なっていて、仲の悪い絵師仲間には山師という評判もありました
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    投稿 TypetrekJさん
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    398
    IA03141 (2022-12-11 評価=4.00)

    しかも、良秀の絵にはすすり泣きの声がした、死人の臭気がした、など気味の悪い評判が伝わります。悪く言うものによれば、良秀の絵が邪道である証拠だそうです

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    投稿 TypetrekJさん
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    409
    IA03142 (2022-12-11 評価=5.00)

    大殿様に対して「素人絵師には醜いものの美しさはわかりませぬ」と高言を吐くような男でしたが、良秀にはたった一つ人間らしい、情愛のある所がございました
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    投稿 TypetrekJさん
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    406
    IA03143 (2022-12-12 評価=5.00)

    ■五 良秀があの一人娘を気違いのように可愛がっていた事です。とはいえ金銭は惜しまないものの、よい婿をとろうなどとは考えず、小女房に上がった事も大不服でありました

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    389
    IA03144 (2022-12-12 評価=4.00)

    ある時など、お言いつけで見事な稚児文殊を描いて、大殿様から望みの褒美を取らせると言われた際、いかに可愛いからと申せ、不躾にも娘の暇を願いでたのです
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    投稿 TypetrekJさん
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    384
    IA03145 (2022-12-13 評価=5.00)

    これには大殿様もご機嫌を損じたとみえ「それはならぬ」とお断りになりました。こんな事が何度か重なり、大殿様の良秀に対する眼はだんだんと冷ややかになって行きました

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    投稿 TypetrekJさん
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    322
    IA03146 (2022-12-13 評価=5.00)

    大殿様は、娘をかたくなな親の側へやるより、邸に置いてやろうというお考えだったようです。そんな頃大殿様は突然地獄変の屏風を描くよう、良秀に命じられました
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    投稿 TypetrekJさん
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    378
    IA03147 (2022-12-14 評価=4.00)

    ■六 この屏風は、地獄のようすを描いた絵で、屏風の一面に小さく閻魔大王らが描かれたほかは、渦巻く猛火に罪人達が苦しんでおり、通例の地獄絵よりすごみがありました