「青鬼の褌(ふんどし)を洗う女」は専務のオメカケとなるサチ子が多くの恋をし自分に正直に生きる姿を描く坂口安吾の実験的作品。軽妙な文体で入しやすい
- IA03911 (2024-01-02 評価=4.00)
匂いって何だろう? 私は近頃人の言葉を鼻で嗅ぐようになった。私は空襲で母とはぐれた。私は上野公園へ逃げて助かったが、二日目に隅田公園へ行ってみたら、母は死骸になっていた - IA03912 (2024-01-02 評価=5.00)
窒息死で、腕を曲げ拳を握り、体をすくませていた。母は気が弱くチャッカリして執念深い人だったが、私をオメカケにしたがって、処女が売り物になると信じ、私を愛し大事にした - IA03913 (2024-01-03 評価=4.00)
長時間の外出や男の手紙にはうるさく、男の恐ろしさについて真剣に説明した。だが、母は世間体から弟の航空兵への志願に賛成するような見栄坊で、私は母を愛していなかった - IA03914 (2024-01-03 評価=4.00)
母は神棚に拝みながら、周囲には倅のりりしさを吹聴していた。私のようにゼイタクな遊び好きは、名誉もお金もない女房にはなれない、金持ちで年寄りのオメカケがよかろうという - IA03915 (2024-01-04 評価=5.00)
私は女学校の四年の時に金持ちの同級生の登美子さんに誘われてゴルフをはじめた。女学生が二人でゴルフをするなんて破天荒の異常事なのに、母は高価なゴルフ用具も買ってくれた - IA03916 (2024-01-04 評価=5.00)
そのうち映画俳優の三木昇と友達になった。彼は悪趣味で、センスのないギター自慢。私を口説いたが拒絶すると、登美子さんを口説く薄っぺらな男だった。その後交際はやめた - IA03917 (2024-01-05 評価=5.00)
登美子さんは、三木が先に私を口説いた事を彼が否定したので、後はパトロンヌ気取りで彼と交際していた。処女は守っているそうだが、私は何度も彼女の宿泊のアリバイを手伝った - IA03918 (2024-01-05 評価=5.00)
私が彼女にアリバイを頼んだ時は、事情を根掘り葉掘り訊問したが、私は取りあわなかった。彼女は卒業後事務員を経て百貨店の売り子になった。私も勤めに出たいと母に言った - IA03919 (2024-01-06 評価=5.00)
すると母は焦って土木建築の親分のオメカケにしようとした。私はオメカケが厭ではないが、性格がスローモーションなので仁義の世界に合わないし、自由を束縛されるのは厭だった - IA03920 (2024-01-06 評価=5.00)
ところが母は承諾した以上、厭だと言えば命が危ない、といって脅迫する。そこで私は薄馬鹿だが伝言のうまい、三歳年上で22歳の洗濯屋の娘に断りに行ってもらったらうまくいった - IA03921 (2024-01-08 評価=5.00)
そのうち時世が変わった。私やお友達は戦争になんか関心はなかったが、母は私の徴用逃れに女房の口を探し始めた。そんな所に私の徴用が決まったので母は泣きだしてしまった - IA03922 (2024-01-08 評価=4.00)
日頃生活が窮屈な私には、徴用の戦意高揚イベントの退屈な立ち仕事でも面白かった。だが奥さんたちは徴兵や徴用で軍部や政府を憎んでいた。亭主が不在ならせいせいするだろうに - IA03923 (2024-01-09 評価=5.00)
男がいなくなると世界が全てなくなるような惨めさに私は堪えられない。母もオメカケが国賊となったので、戦争を憎み呪っていた。母は「早く日本が負けないかね」などと言っていた - IA03924 (2024-01-09 評価=5.00)
着物を着られなくなったらどうしよう、などと言いながら母は日本の滅亡を祈り、私をあちらのオメカケにしようと考えていた。弟も敵に降参して助けて貰えばいい、などと言う - IA03925 (2024-01-10 評価=4.00)
母は妹への溺愛のあまり、盲腸手術後に水を飲ませ、腹膜炎で殺したこともあった。母は無智なのだ。私は六人の男に出征する直前からだを許していたが、母は気付かなかった - IA03926 (2024-01-10 評価=5.00)
出征前なのは、後で付きまとわれるのが厭だったからで、病弱の美青年二人は、すぐ帰されそうなのでやめた。それから、登美子さんは不感症だそうだ。私はとても快感を感じる - IA03927 (2024-01-11 評価=5.00)
私は自分より電車の中や路上でも赤くなる、登美子さんの方が浮気だと思う。私はあんなことは適度なのが好きだ。終戦後あった時、三木昇は私を口説き自分は精力絶倫だと自慢した - IA03928 (2024-01-11 評価=5.00)
私は肩をだかれて少し歩いたが、食べものの事を考えていた。肩をだくと男は接吻しようとしたりする。私は顔をそむけるが、面倒になって、接吻させてやることも何度かあった - IA03929 (2024-01-12 評価=4.00)
★ 徴用の会社で、私は事務に回されたが、会社は一部を残して分散疎開することになった。私も疎開をすすめられたが、遊び場のない田舎へ落ちのびる気持ちにならなかった - IA03930 (2024-01-12 評価=5.00)
会社で私は平社員から重役まで口説かれた。精神的に何かが低い相手は厭で、重役にだけ好感がもてた。商店主の母の旦那は山の別荘に疎開し、母も空襲が始まるとその近くに疎開した