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風立ちぬ (堀辰雄) 143分割入力文の数= 143 <<  1  2  3  4  5   >>

美しい高原で病気の婚約者に付きそう私。残された短い日々を、二人はどうすれば幸せに送ることができるのか? 深い愛情を描く堀辰雄の名作

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  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    386
    IA02945 (2022-09-18 評価=3.33)

    ■序曲 秋近い日、私達はお前の描きかけの絵を画架に立て、白樺の木陰に寝そべって果物をかじっていた。その時不意に風が立ち、木の葉の間の藍色が伸びたり縮んだりした
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    398
    IA02946 (2022-09-18 評価=3.50)

    画架が倒れた音がした時「風立ちぬ、いざ生きめやも」という詩句が口をつく。お前は画架を立て直し「こんなところをお父様に見つかったら…」と曖昧な微笑でつぶやいた

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    393
    IA02947 (2022-09-19 評価=4.00)

    ある朝、お前は「二三日で父親が来たら、もう散歩も出来なくなる」と言った。私が「もうお別れなのかい」と尋ねると、お前は諦め切ったように微笑んだ
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    349
    IA02948 (2022-09-19 評価=4.00)

    お前の顔色は蒼ざめていた。お前はこの夏、偶然出逢った私に従順だった。同じように、父を含めお前を支配しているものすべてに、素直に身を任せるのだろうか

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    390
    IA02949 (2022-09-19 評価=3.50)

    私は「節子、生活の見通しがつくようになったらお前をもらいにいく」と自分に言いきかせ、お前の手をとる。私達は押し黙って木洩れ日を見つめていた
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    339
    IA02950 (2022-09-19 評価=4.00)

    それから二三日、私はお前が迎えに来た父親と食堂で食事しているのを見た。もう彼女は私を見向きもしないように感じられ、私は散歩の後、ホテルの庭をぶらぶらしていた

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    346
    IA02951 (2022-09-20 評価=4.00)

    夜になりホテル中が真っ暗になると、窓が開き、寝間着を着たお前が窓によりかかるのが見えた。お前達が出発してから、私は長らく放っていた自分の仕事に没頭した
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    361
    IA02952 (2022-09-20 評価=4.00)

    私が出発しようとする前日、ひさしぶりに散歩をすると、林の落ち葉の匂いが季節の推移を感じさせた

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    392
    IA02953 (2022-09-20 評価=5.00)

    私はひらけた草原に足を踏み入れ、傍らの白樺の木陰に身を横たえた。そこは夏の日々、お前が絵を描き、私が横になっていた所だ。私は遠い山脈の姿に見入った
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    397
    IA02954 (2022-09-21 評価=4.00)

    ■春 三月、私がぶらっと節子の家を訪れると、父が麦わら帽をかぶって木の手入れをしていた。父は私と婚約した節子が元気になって来たので、転地を考えていると言い出した

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    431
    IA02955 (2022-09-21 評価=5.00)

    父は「院長さんがあなたの知人というサナトリウムを、節子はどうかと言っているが、一人で暮らせるような場所だろうか?」と尋ねた。私はみな一人でいる、と答えた
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    388
    IA02956 (2022-09-21 評価=5.00)

    そして私が、僕も一緒に行ってもいいですよ、と言うと、父は「そうしていただけたら一番いいのだが」と明るい顔をした

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    405
    IA02957 (2022-09-22 評価=3.00)

    庭から病室に近づくと、節子が窓越しに見えた。彼女は寝間着に羽織をひっかけて長椅子に横たわり、帽子をもてあそんでいた
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    378
    IA02958 (2022-09-22 評価=4.00)

    私が声をかけると、彼女は「この帽子は、私はかぶれないのに、お父様がきのう買ったのよ」とこぼした

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    400
    IA02959 (2022-09-22 評価=4.00)

    私が「好いお父様じゃないか」と言って、帽子を彼女の頭にかぶせる真似をすると、彼女は避けるように身を起こした
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    388
    IA02960 (2022-09-22 評価=4.00)

    私がサナトリウムへ行く話をすると「早く良くなれるなら…」と彼女は口ごもった。私が「僕に一緒に来てほしいの?」と尋ねると彼女は否定した

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    430
    IA02961 (2022-09-23 評価=5.00)

    「僕が前に淋しい山の中で二人きりで生活してみたい、と言ったことがきっかけかい?」と尋ねると、彼女は「あなたはとんでもないことを考え出すのね」と答えた
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    400
    IA02962 (2022-09-23 評価=5.00)

    *** 節子の病気は回復期に近づいているようには見えたが、遅々としていた。ある日の午後、私が行くと、節子はめずらしく青いブラウスに着換えていた

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    376
    IA02963 (2022-09-23 評価=4.00)

    二人で芝生に出ると、植え込みの上に白や紫などの小さなつぼみが咲き出しそうになっていた。私が「これはライラックだったね」と尋ねると彼女は「違うかも知れない」と言った
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    384
    IA02964 (2022-09-23 評価=4.00)

    「嘘をついた訳じゃないけど。金雀児(えにしだ)は本物。お父様のご自慢…」そんな他愛のないことを言い合いながら、彼女は私にもたれかかっていた